yosak's diary

忘備録と備忘録

2月日記(14日)

新宿シネマカリテにて『どん底作家の人生に幸あれ!』を鑑賞。
如何にもイギリス風の少しシニカルなユーモアは、(宣伝でも言及があった)テリー・ギリアムぽさを思わせる。個々に多彩な要素があり見応えはあるが、全体的な物語は少し散漫な印象も感じた。白人の親から産まれた(物語では父親の言及がないが、姉がティルダ・スウィントンなので同じく白人と思われる)主人公がインド系なのを始め、イギリス系上流階級友人の母親が黒人だったり、アジア系の娘が黒人だったりと、あえて人種を無視した配役をしているのが現代的なアプローチ。一昔前だったら「あえて」の部分が変に際立っただろうが、今はそれほどでもなく「なるほどね」な感じ。

続いて、新宿ピカデリーにて、西川美和監督作『すばらしき世界』を鑑賞。
台風一過の抜けた青空に『すばらしき世界』とのエンドタイトル。慈愛と皮肉が入り混じったような、100点の終わり方。
予告宣伝で「この世界は生きづらく、あたたかい」との惹句があったが、まさに現代社会による飴と鞭の連続攻撃みたいな物語だった。
主人公の三上に対し、その「(社会の中の)飴と鞭」で接する人物が六角精児や北村有起哉という一見、人相の悪い、でも人間味のある配役なのが見事。そういう意味では三上のヤクザ時代の兄弟分が、ヤクザ役でおなじみ白竜で、それがずっと温和な表情をしているのも凄い演出。
題材はとても扱いづらく重い社会的なテーマなのだが、笑いと涙を織り交ぜた娯楽作品として実によく出来ている。他愛もないシーンなのだが、役所広司と仲野太賀がバスに揺られるシーンの音楽や演出や撮影やらが秀逸だった。
よく社会を表すときに「あちら側、こちら側」などと表現するが、実際には、そんなラインなどなく地続きのグラデーションなのだと改めて感じた。
さすがにヤクザとか前科とかは無いが、真面目に進学して就職して、というタイプでは無いので、あの社会のレールを踏み外した人間の生きづらさ、三上の苦しむ姿は他人事ではなかった。終盤の介護施設でのくだりとか祈るように観てた。
仕事が決まった三上が嬉しそうに走りながら、その喜びによる高揚感を「シャブキメたみたいや」と言い表すくだり、三上の子供みたいな表情も相まってとても好き。
夢売るふたり』にて、「ヤマザキ春のパンまつり」でおなじみ松たか子にめちゃくちゃ不機嫌そうに不味そうにパンを食べさせていたが、今作でも「マルちゃん正麺」でおなじみ役所広司カップ麺を一口食べてぶん投げるという行為をさせていた。これは西川美和監督独特のジョークだと思うんだけど確認する術がない。

お昼は西新宿の「175°DENO担担麺」にて限定の麻婆麺を食す。
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東京で麻婆麺といえば銀座の「蝋燭屋」が有名だけど、それと比べると辛さや痺れだけが立っていて少し旨味が弱い印象で物足りない。担担麺がメインの店だから仕方ないか。

夜は妻が買ってきてくれたお高いチョコレートケーキを食べる。バレンタインということで。
『すばらしき世界』のような作品を観た後だと、いつもより一層、家族と仲良くしたいという気持ちになるな。劇中の梶芽衣子のセリフ「怒りが込み上げてきたら、私たちの顔を思い出して」を想う。